結論から書きます。出前館は2026年7月15日、今期(2026年8月期)の最終損益の予想を、40億円の赤字から78億円の赤字へ下方修正しました。金額はほぼ2倍です。株主向けのニュースに見えますが、配達員が読むべきところは赤字の額ではありません。修正の背景として報じられた、オーダー数が見込みに届かなかったという一点です。注文の数は、私たちの鳴りと時給に直結します。実際、私が走っている渋谷エリアでは、この数週間で鳴り方が変わってきていました。この記事では、発表された数字を配達員の言葉に翻訳して、撤退リスクの現実的な見方と、今週からの立ち回りまで整理します。
何が発表されたのか
まず事実関係です。出前館は7月15日、東京証券取引所の適時開示で通期予想の修正を発表しました。
業績予想の修正に関するお知らせ
(出典: 株式会社出前館 適時開示、2026年7月15日)
開示と各社の決算報道を自分の言葉でまとめると、次のようになります。
- 2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)の最終損益の予想を、従来の40億円の赤字から78億円の赤字へ引き下げました(出典: 日本経済新聞 2026年7月15日、ウエルスアドバイザー 2026年7月15日)。
- 同じ日に発表された第3四半期決算では、2025年9月〜2026年5月の9カ月間で純損失が63.3億円と報じられています(出典: ウエルスアドバイザー 2026年7月15日)。
- 修正の背景について、日本経済新聞はオーダー数が見込みに届かなかったことを挙げています(出典: 日本経済新聞 2026年7月15日)。
時系列を並べると、もう一つ気づくことがあります。出前館は昨年も同じ7月15日に、第3四半期決算に合わせて2025年8月期の通期予想を赤字方向へ下方修正していました(出典: 株探ニュース 2025年7月15日)。今期は期初の計画で赤字を40億円まで縮める予定でしたが(出典: 日本経済新聞 2025年10月)、結局2年続けて、夏に計画を引き下げた形になります。
赤字のペースも見ておきます。今年4月に発表された中間決算(2025年9月〜2026年2月)の最終赤字は約31.8億円でした(出典: 日本経済新聞 2026年4月)。第3四半期までの累計が63.3億円ですから、単純計算で、3月から5月の3カ月だけで約31.5億円。半年分とほぼ同じ額の赤字を、直近の3カ月で出した計算になります。また、通期予想の78億円から逆算すると、残りの6月から8月にも15億円ほどの赤字を織り込んでいることになります。数字の並びとしては、良くなる途中ではなく、悪化の途中に見えます。
「オーダー数が届かない」は配達員の時給の話
会社の赤字と配達員の稼ぎは、実は直接つながっていません。会社が赤字でも、注文が鳴れば配達員は稼げます。逆に、赤字を止めるためにクーポンや販促のお金を絞れば、注文が減って鳴りが弱くなります。だから配達員が決算で見るべきなのは、損益の金額よりも、注文の量と、注文を呼ぶためのお金の使い方です。
その意味で、今回の開示は軽くありません。オーダー数が計画に届かなかったというのは、誰かの体感の話ではなく、会社の開示に基づいて報じられた事実だからです。最近出前館の鳴りが弱いと感じていた人にとっては、その体感が数字の側から裏付けられたことになります。
私自身の体感も書いておきます。ここ2〜3週間、渋谷駅周辺を中心に、平日の18時から21時と、土日のランチ帯で出前館を稼働しています。以前はピークタイムなら、待機して数分以内に次のオーダーが入ることが多かったのですが、最近は10分、20分と待っても鳴らない時間帯が増えました。件数でいうと、以前は3時間で10件前後は配達できていたのが、直近では5〜6件程度で終わる日も珍しくありません。もちろん天候や曜日による差はあります。それでも「注文数が減った」と感じる日は、以前より増えています。会社が公表している注文数や流通額の推移と、この現場の体感に大きなズレはない、というのが率直なところです。
一方で、自分のエリアでは普通に鳴っている、という人もいるはずです。全国の合計が計画未達でも、エリアごとの濃淡は大きいのがこの仕事です。なので、このニュースを受けての判断は、全国の数字ではなく、自分のエリアの鳴りを基準にやるべきです。そのための道具を、後半で用意しました。
撤退をどれくらい心配するべきか
赤字拡大のニュースが出ると、必ず「出前館は撤退するのでは」という話が出ます。過去を振り返ると、フードデリバリーの撤退は実際に何度も起きてきました。2022年にはDiDi FoodとDoorDashが日本から撤退しています(当時の状況は[DiDi Food撤退の記事](https://www.bkb.delivery/food-delivery/1443/)と[DoorDash撤退の記事](https://www.bkb.delivery/food-delivery/1832/)にまとめています)。そして今年はWoltでした。Woltは2026年2月25日に日本でのサービス終了を発表し、3月4日に終了しました(出典: Wolt ニュースルーム、2026年2月25日発表)。発表から終了まで、わずか1週間ほどです。
この経験から言えることは2つあります。撤退は、起きるときは突然発表されます。そして、発表を見てから稼働先を組み直すのでは間に合いません。
ただし、今回の下方修正を撤退の予告と読むのは飛躍です。出前館は東証スタンダードに上場する国内大手で、下方修正は「今期の計画を達成できない」という開示であって、事業をやめるという発表ではありません。前期(2025年8月期)も最終赤字でしたが(出典: 日本経済新聞 2025年7月報道)、サービスは続いています。現実的に警戒すべきなのは、明日なくなることではなく、赤字を止めるためにお金の使い方が変わって、鳴りやインセンティブの条件がじわじわ変わっていくことの方です。
判断軸: 出前館シフトの信号機
そこで、この記事の判断軸を1つ置いておきます。名前をつけるなら、出前館シフトの信号機です。ニュースの見出しではなく、自分の画面とエリアで確認できるサインだけで判定します。
- 青信号: ピークタイムの鳴りがこれまで通りで、ブーストやキャンペーンも普段の水準で出ている。この場合、稼働はそのままで問題ありません。ただし掛け持ち用のアプリ登録だけは済ませておきます。
- 黄信号: 鳴りの体感が数週間下がり続けている。ブーストの倍率や回数が目に見えて渋くなった。注文アプリ側のクーポンの露出が減った。このどれかが当てはまったら、出前館の比率を下げて、稼働を他社に移し始めます。
- 赤信号: キャンペーンの全面停止、対応エリアの縮小、事業の見直しに関する会社発表や報道が出た。ここまで来たら主軸を他社へ移し、出前館は鳴ったら取る側に回します。
参考までに、私の画面で起きている変化も書いておきます。以前は夕食の時間帯に3倍以上のブーストを見かける日もありましたが、最近は1〜2倍程度が中心で、出る時間もランチとディナーの短い枠に限られることが多くなりました。インセンティブの出し方も、連続稼働向けより、特定の時間帯や一定件数の達成型が増えてきた印象です。稼働前には毎回アプリでブーストとキャンペーンを確認していますが、「今日は狙い目だ」と思える日が少なくなった、というのが正直な感想です。この信号機に当てはめるなら、少なくとも渋谷エリアは黄信号に片足が入っている、というのが私の判定になります。
大事なのは、判定の材料を全国ニュースではなく自分の稼働記録に置くことです。会社の数字は3カ月に1回しか出ませんが、自分の鳴りは毎日観測できます。
次の全社的なチェックポイントは、10月中旬に出る本決算です。昨年は10月15日に発表されました(出典: 株探ニュース 2025年10月15日)。そこで来期の計画がどう置かれるかで、販促とインセンティブの方向感がある程度見えてきます。
今週からの立ち回り
具体的にやることは3つです。
- 掛け持ちの登録を済ませておく。Uber Eatsやmenu、ロケットナウなど、自分のエリアで動いているサービスの配達員登録は無料ですが、書類確認や審査で日数がかかります。黄信号になってから登録を始めると、切り替えたいタイミングで走れません。いま出前館専業の人ほど、登録だけ先に済ませておく価値があります。
- 自分の鳴りログをつける。稼働した日の件数、時間帯、待機の長さを簡単にメモしておきます。出前館全体のオーダー数は決算のときにしか分かりませんが、自分のエリアの需要は自分の記録がいちばん正確です。信号機の判定を、体感ではなく記録でできるようになります。
- インセンティブの条件を保存しておく。ブーストやキャンペーンの画面は、変更されると前の条件を見返せません。スクリーンショットを残しておくと、渋くなったかどうかを記憶ではなく記録で比べられます。
掛け持ち先の選び方は、[フードデリバリー3社比較の記事](https://www.bkb.delivery/food-delivery/75/)も参考にしてください。
まとめ
今回確定した事実は、出前館が今期の赤字予想を40億円から78億円へ広げたこと、その背景としてオーダー数の計画未達が報じられたことです。渋谷での私の体感も、この数字と矛盾しませんでした。撤退の予告ではないので、今日出前館を切る必要はありません。ただ、Woltの終了が発表からわずか1週間だったことを思い出すと、出前館一本で走り続ける構えはすすめません。登録を増やし、記録をつけて、信号が変わったらすぐ動ける状態を作っておく。ニュースに驚かされる側ではなく、先に準備しておく側に回りましょう。この記事は、10月の本決算が出たタイミングで追記する予定です。










